Constantine Dovrolis.
What would Darwin Think about Clean-Slate Architectures?
ACM CCR, vol 38(1), January 2008.
http://www.cc.gatech.edu/fac/Constantinos.Dovrolis/publications.html
ここ数年、ネットワーク研究の分野では、Future Internetと称してアーキテクチャをいちから設計しなおそうという活動が活発である。そして世界中で政府系の研究予算の多くが投入され、その分その波に乗らない研究予算が削られている。本論文は、このような傾向に正面から疑問を呈している。
論文では、複雑なインターネットの進化を生物の進化に例えながら、進化(evolution)的アプローチと再設計(clean-slate)的アプローチを比較して、既存のアーキテクチャをもとに進化することの優位性を主張している。
- インターネット環境は変化が早く、かつ予想が困難。
- これまでは、プロトコルやアプリケーションも、さまざまな亜種が生まれ、自然淘汰され、利用者に受け入れられたものが生き残るという進化的発展をしてきていて、これが環境変化に強いインターネットを作ってきた。
- 普及しなかった技術(例えばRSVPやMBONEなど)は、その技術の優劣よりも、既存の環境や関連技術とのシナジーが作れなかったのが原因。
- IPやTCPなどコアプロトコルはあまり変わっていないが、それこそが上下の層で多様な進化をするための基盤となっている。
- 再設計しても、実用化される10年後にはすでに時代遅れになっているだろう。
- 再設計もいいが、進化的アプローチの研究の重要性を再認識して、進化の種となる亜種を生む多様な研究をサポートするべきた。