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昨日はSony CSLの20周年シンポジウムへ行ってきた。
社長の所さんはこれからの研究の方向性として、オープンシステムサイエンスを掲げている。WIDE20周年イベントのキーノートでも同様の話があったので、簡単にまとめておく。

20世紀の研究の多くは、研究対象を分解し個別要素を理解しようとする還元主義的アプローチだった。しかし、20世紀末には還元主義的アプローチが適用できない複雑系科学が出てきて、複雑な現象を複雑なまま理解する姿勢が必要になってきている。
21世紀の科学の大きなテーマとして、複雑な開放系システムの動的で複雑な挙動にいかに取り組むかが上げられ、そのためには全く新しい科学へのアプローチが必要になる。
ここでは、要素に分解できないだけでなく、系を止める訳にはいかないので動いている状態で観察や実験しなければいけない。そのためには、科学者は従来の純粋科学の枠を越えて、工学や管理運用といった部分を含んで考えなければならない。このような取り組みをするには、オープンコラボレーションが必須になるだろう。

このようにまとめてみると、これはまさにインターネット研究者がやってきていることに重なる。

Norman本の中で見つけた話題。
リスク補償(risk compensation)とは、人間は安全性が高まったと感じると、よりリスクを取るように行動を変える傾向があるという理論。例えば、ABS付きの自動車に乗ると、走行スピードを上げる傾向があるというもの。
リスク恒常性(risk homeostasis)は、この考えの極論で、Gerald Wildeは安全対策をしてもその分危険な行動が増えるため全体の事故率は変わらないとして大きな波紋を呼んだ。

ポイントは、統計的に事故率をみると、技術面からだけの安全対策は期待したほどの効果がない場合が多く、それに対して、人間心理を考え注意喚起するような対策の方が効果的だということだろう。

Shared spaceは、このような考えのもとに、人が集まる公共の場所では信号や標識や歩道もなくし、道路利用者が自然と自覚と責任を持って行動するようにすることで、交通をスムーズにして事故を減らすというアプローチで、世界中で試みがなされていて成功しているらしい。(ヨーロッパのshared spaceプロジェクト)

インターネットの安全な利用やトラフィック増大への対策も、技術面だけでなく、このような考え方でアプローチするのがいい気がする。

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