インターネット屋のカルチャーは、あまり外部のひとには理解されていない。その原因のひとつは技術者が書いた日本語の文章が少ないことだろう。
そこで、ディジタル技術の進化にとって多様性が大事であるという事を文章にしてみた。 内容はとくに新しい訳ではなく、エンドツーエンドの原則やネット中立性などで議論されてきたことであるが、自分なりの切り口でまとめてみた。
http://www.iijlab.net/~kjc/papers/digital-evolv.pdf
さわりの部分は以下のようになっている。
ディジタル技術進化論
ディジタル技術の進歩するスピードは、他の技術とは比べものにならない。この革新スピードをもたらしているのは、汎用コンピュータであるPC と汎用ネットワークであるインターネットだと言える。つまり、新しいアプリケーションがどんどん生み出され、世界中に広まる仕組みこそが、技術革新の根源になっていて、それは生物の進化の仕組みに似ている。
ダーウィンの進化論では、生物は環境に対して生存に有利な形質を持つものが多くの子孫を残し、その繰返しのなかで環境に適応して進化すると説明される。いっぽうで、過度に環境適応すると、急激な環境変動には対応できなくなり、やがて絶滅してしまう。
ディジタル技術においても、多様なアプリケーションが生まれ、それぞれがより効率的に、また使いやすく世代交代して行き、多様なものの中からより良いものが生き残ることが繰り返されて技術が進化する。とくに、ディジタル技術では、それを取り巻く環境の変化が速いので、技術の交代も速い。個別の技術が進化すると同時に、環境変化によって主流となる技術が交代していくダイナミクスこそが、ディジタル技術革新のスピードを生み出している。
これまでにも、PC とインターネットの普及に伴いweb が生まれ、ダイヤルアップ接続利用が広がり、それがブロードバンドと常時接続に進んで、ソーシャルネットワークやP2P 技術が誕生した。今後も環境変動に応じて新しいアプリケーションが生まれ、相乗効果で技術が進化していくのは間違いないだろう。
ここで重要なのは、生物進化とのアナロジーで言うと、個別の技術は種のレベルの進化であり最適化であるが、環境変化に伴う技術の変遷は生態系レベルの進化であり、種つまり技術の多様性によって支えられる。 多様な技術が存在すれば、その中から新しい環境に適合するものが現れる可能性が高くなる。PC やインターネットが基盤技術と言えるのは、多様な生態系を維持する役割を担っているからである。
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