自分の専門であるインターネットの計測と解析という研究分野を、専門外の人に説明するのは非常に難しい。 本書は、自分の研究に最も近い一般書籍、というか、僕の研究分野を一般のひとにも分かるように説明しようとしてくれている書籍だ。その意味でこの本がどう評価されるかは、自分の研究が一般に理解されるかどうかと直結している。
筆者はふたりとも僕の良く知る人物で、この本はゲラの段階で読ませてもらった。 まえがきによると、本書は「壊れた事例から垣間見えるインターネットの形」をテーマに、「インターネットそのものを観察する方法を伝える」という試みでもある。一般には知る機会がほとんどないインターネット運用の舞台裏を、インターネット屋の視点から、具体的な事件や障害事例を挙げて説明しようとしている。
筆者は一般向けの読み物を目指したようだが、内容はかなりマニアックであり、実際、詳細までよく調べられていて、僕自身のレファレンスとしても貴重な資料である。 筆者によると、できるだけ事実を正確に伝えて、その解釈は読者に委ねるというスタンスで書いたとのことだが、一般の読者には少し敷居が高いだろう。 正直、ネットワークの専門家でもこれらのトピックを正確に説明できるひとは多くはいない。この本を面白いと思う読者層はインターネット関係の技術者に限られるだろう。一方で、それ以外のひとが、このようなトピックに技術的には分からない部分があるにせよどれぐらい興味を持つか、という事も非常に興味深い。
とにかく、この本が出版されたことは、僕にとって非常に喜ばしい出来事である。
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